【日本のグローバルニッチ会社を分析!】第⼀稀元素化学⼯業ってどんな会社?

企業分析
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経済産業省は、2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」を選定しています。

これは、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部素材等の事業を有する優良な企業を選定するものです。

この「グローバルニッチトップ企業100選」に含まれている会社の1つである「第一稀元素化学工業」を見ていきます。

 

第一稀元素化学工業がどのような強みを持っているのかを理解していきましょう。

 

第一稀元素化学工業は何をしている会社?

第一稀元素化学工業は、ジルコニウム化合物を中⼼に、セシウム化合物、希⼟類化合物などの無機化合物の製造・販売を⾏っています。

ジルコニウム化合物は、主に自動車排ガス浄化触媒用材料に使用され、世界シェアは約 40%を占めています。

自動車排ガス浄化触媒は、貴金属の働きにより有害物質を浄化します。

第一稀元素化学工業製品は、その働きを助ける材料の一つとして使用され、触媒の浄化性能の向上・環境負荷低減に貢献しています。

 

ジルコニウムとは?

ジルコニウムは原子番号40の元素。元素記号は Zr。チタン族元素の1つです。

ジルコニウムは遷移金属に分類されるレアメタルの一つで、その酸化物は融点が高く優れたセラミックス材料として知られます。

大気中では表面に酸化膜が出来るため、腐食もされにくい性質を持ちます。

高温下では酸化物や窒化物をはじめ、各種化合物となります。

 

ジルコニウム化合物には高い耐食性や耐熱性、吸着性能などがあり、その優れた特性から、ペーパーコーティング、ポリマー・クロスリンキング(架橋反応)、電子材料、ファインセラミックス、触媒など様々な用途に使用されています。

 

なぜ第一稀元素化学工業はジルコニウムに目をつけたの?

第一稀元素化学工業の創業は1956年。

創業当時、ジルコニウムには使い道も需要もなく、手がける企業はありませんでした。

しかし、物質としての可能性を信じた創業者は「誰も手をつけていないから、我らがやる」と決意。

第一稀元素の歩みは、ジルコニウムの特性解明の歴史そのものといえるのです。

 

 

第一稀元素化学工業の強みは?

ジルコニウム製品化に関するノウハウ・技術⼒

経済産業省は、2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」によると、

第一稀元素化学工業は「⾃動⾞排ガス浄化触媒⽤材料」で受賞をしています。

ジルコニウム化合物の世界シェア約40%。

それはひとえに第一稀元素化学工業が、50年以上も前からジルコニウムの可能性を見出し研究を積み上げてきた成果です。

このジルコニウムを利用した製品化に関するノウハウ・技術力は非常に大きな強みです。

 

鉱石から製品までの一貫生産

第一稀元素化学工業は、ジルコニウムの原鉱石から製品までをグループ内で一貫生産できる世界で唯一の企業です。

生産拠点を日本、ベトナム、中国に置き、独自の原材料調達ルートを確保することでサプライチェーンを複線化し、製品の安定的な供給を実現しています。

この点も、第一稀元素化学工業の強みの1つと言えます。

 

 

第一稀元素化学工業の弱みは?

有価証券報告書(2020年3月期)の【事業の状況】の中から、一般的なものを除き第一稀元素化学工業に特有と認められるリスクを記載します。

要約すると以下の通りです。

・自動車関連業界に依存している

・ジルコニウム需要に依存している

・主要製品に使用される原材料(ジルコニウム・セシウム・希土類)は、その全てを海外からの輸入に依存している

 

特定業界への依存について

リスクの内容

自動車排ガス浄化触媒・酸素センサー・ブレーキ材・セシウムフラックス等の広義の自動車関連業界向け製品は、第一稀元素化学工業グループ売上高の概ね8割を占めております。

従いまして、同業界の生産動向は、当社グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を与えます。

リスクへの対応策

燃料電池やファインセラミックス等、エネルギー及びヘルスケア分野への素材提供を強化し、バランスの取れた売上構成の実現に努めております。

 

設備投資計画について

リスクの内容

増加するジルコニウム需要を確実に取り込むために、国内外における新規設備投資を積極的に進めております。

しかしながら、第一稀元素化学工業グループが提供する製品の需要が期待通りに推移しなかった場合は、固定費の増加や減損損失の発生等、第一稀元素化学工業グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を与えます。

リスクへの対応策

状況に応じた柔軟な対応が取れるように、多品種生産に対応できる設備設計に努めております。

 

原料の仕入(輸入)について

リスクの内容

主要製品に使用される原材料(ジルコニウム・セシウム・希土類)は、その全てを海外からの輸入に依存しております。

それらの仕入価格は、政治・経済情勢に影響を受けた場合、たな卸資産の収益性低下による簿価切下げ等、経営成績及び財務状況に大きな影響を与えます。

リスクへの対応策

原材料の調達国を複数に分散し、たな卸資産量を適正に保つことで、原材料の価格変動による影響の軽減に努めております。

 

 

第一稀元素化学工業の業績は?

バフェット・コードをつかって業績を見ていきましょう。

(バフェット・コードより)

 

決算年度 単位 2019 2018 2017
売上高 26,518,686,000 27,483,963,000 25,537,829,000
売上総利益率 28.3 30.5 33.3
営業利益率 11.7 15.3 18.1
純利益率 8.9 11.3 11.6
ROE 8.1 11.4 12.1
ROA 4.6 6.8 8.4
自己資本比率 57 59 69
営業CF 4,288,222,000 2,641,805,000 774,193,000
投資CF -9,135,365,000 -6,389,048,000 -3,425,373,000
財務CF 5,877,788,000 5,908,880,000 1,213,193,000

 

売上・利益率とも安定した値で推移しています。

営業利益率は10%以上で高い利益率を誇っています。

 

キャッシュ・フローにも問題点は見当たらず、自己資本比率も50%を超える高い水準を確保していることから財務リスクは低いと思われます。

 

第一稀元素化学工業の株価は割高?割安?

株価が割安が割高かどうかを考える指標として、PERとPBRを利用します。

<用語と基準について>

PER:株価収益率(Price Earnings Ratio)。「1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)」の何倍になっているかを示す指標。15倍を目安に考えます。

PBR:株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)。株価が直前の本決算期末の「1株当たり純資産」の何倍になっているかを示す指標。1.5倍を目安に考えます。

 

第一稀元素化学工業の株価は2021/3/3終値で1,053円です。

これでPERとPBRを計算すると、PERは32.0倍 > 15倍。 PBRは0.9倍 < 1.5倍 となっています。

つまり、収益率から見ると割高、純資産から見ると割安という結果になっています。

なお、PERとPBRの推移は以下のようになっています。

(バフェット・コードより)

 

株価の推移は以下の通りです。

 

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