この記事では、成長企業であるオービックの企業分析を行ってみたいと思います。
オービックは1968(昭和43)年に創来した会社で統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」で有名です。
多くの企業で「OBIC7シリーズ」を導入しており、私も監査した会社でOBICを導入している会社をいくつも経験したことがあります。
大企業というよりは中堅企業で導入が多い印象です。
そのオービックは下記のように毎年成長を遂げています。
なぜこのような成長を続けることができているのでしょうか。
その秘密を探ってみたいと思います。
■オービックのビジネスモデル
ビジネスモデルは有価証券報告書の【事業の内容】を見ることで理解できます。
オービックは統合基幹業務システムの製造販売を主に行う「システムインテグレーション事業」、統合基幹業務システムの運用支援・保守を主に行う「システムサポート事業」、OA機器一般及びコンピュータサプライ用品の仕入・販売を行う「オフィスオートメーション事業」、財務会計等パッケージソフトの製造・販売を行う「業務用パッケージソフト事業」から成り立っています。
(有価証券報告書【事業の内容】より)
また、会社HPの「オービックの特徴」を見てみると、「自社開発・直接販売にこだわっている」との記載があります。
システム開発や営業活動において外注していないことが伺えます。
次に、各事業がどのくらいの規模なのかということが気になりますが、これは【経理の状況】の中にある「セグメント情報」を見ることでつかむことができます。
これを見ると、売上割合は以下のようになります。
・システムインテグレーション:約51%
・システムサポート:約37%
・オフィスオートメーション:約12%
また、バフェット・コードで各セグメントの売上推移・利益推移・利益率推移を確認することができます。
これを見ると、以下が理解できます。
・各セグメントとも売上が毎期増加している
・各セグメントとも利益率が毎期増加している。特に、システムサポート・システムインテグレーションの利益率が過去5年間で10%以上増加している。
・利益率は システムサポート > システムインテグレーション > オフィスサポート の順
システムサポート・システムインテグレーションの利益率が過去5年間で10%以上増加しているのはビジネスモデルに関係していると思います。
オービックのビジネスモデルは、統合基幹業務システムを自社開発し、それを販売しつつその後の保守も行うという体制でした。
システム(ソフトウェア)というのは、開発には多額のコストがかかる事も多いですが、複製コストが非常に低いのが特徴です。
クラウドサービスについても、サーバーなどの運用費用は必要となるものの複製コストは低いです。
そのため規模を拡大するほど追加でかかるコストが少なくなる構造であり、販売量が増加すればするほど利益率が高くなるのです。
これは他の業種、例えば小売業や製造業などでは実現できません。
小売業では商品原価は販売量に連動して増加していきますし、製造業においても作れば作るほど1個当たりのコストは低くなりますが、設備の償却費負担などの固定費割合が大きく、ソフトウェアのような利益率上昇は実現できません。
■なぜオービックは成長を続けることができているのか
私は以下の要因が効いているとみています。
・自社で開発・販売を行っていること
・新卒採用を継続的に行っており、離職率が低いこと
上記要因により自社内で開発や営業に対するノウハウが蓄積され、他社との差別化要因になっていると考えられるのです。
自社内で開発や営業を実施していることは会社HPの「オービックの特徴」から確認できました。
では、「新卒採用を継続的に行っており、離職率が低いこと」はどこから確認できるでしょうか。
これは、有価証券報告書の【従業員の状況】から読み解くことができます。
該当箇所を見てみましょう。
これを見ると、平均年齢が36.5才で平均勤続年数が13.5才なので、23才で入社して13.5年働いていることが平均ということが見えます。
新卒採用を継続的に実施し、その方々が長く働いていることが読み取れます。
また、平均給与も921万円と非常に高いですので、待遇による離職を防いでいるものと思われます。
実際、オービックの会社HPの採用情報をみると新卒採用のページはあるものの、中途採用のページはありません。
新卒採用のページを見ると、新卒100%の旨と人財育成を重視する姿勢であることが記載されています。
■まとめ
オービックの企業分析を行うにあたり、参照したのは以下の資料でした。
・バフェットコード
・会社HP:「オービックの特徴」、「採用情報」
・有価証券報告書:【事業の内容】、【経理の状況】の中にある「セグメント情報」、【従業員の状況】
他社と十分な差別化がされているということは、価格競争に巻き込まれずに高収益を獲得することができることを意味します。
オービックはそれを体現していることがわかりました。
差別化を維持できるかという点が今後の焦点になると思います。
コメント