財務諸表を分析する際に、売上総利益率(粗利率)と営業利益率はよく登場する指標です。
売上総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高
売上総利益ってなに?営業利益ってなに?という方はこちらの記事を参考にしてくださいね。
この売上総利益率(粗利率)と営業利益率の関係をみることで1段深い財務諸表分析ができるようになります。
今回はそのことについて説明したいと思います。
ケース①:売上総利益率(粗利率)は高いのに、営業利益率が低い場合 ⇒ 販売費及び一般管理費に問題あり
売上総利益率(粗利率)は、同業他社と比較して高い値になっているのに、営業利益率になると同業他社よりも低い水準になってしまうケースです。
売上総利益率(粗利率)は30%あるのに、営業利益率は1%みたいな。
このような値になっているときに、何が問題になるでしょうか。
答えは、「販売費及び一般管理費」にあります。
営業利益は、売上総利益 - 販売費及び一般管理費で計算される指標でしたね。
そのため、販売費及び一般管理費が同業他社よりも高い水準にあれば、営業利益率が同業他社よりも低い水準になってしまうのです。
数値例で確認してみましょう。
自社 | 同業他社A社 | |
売上 | 10,000 | 8,000 |
売上原価 | 7,000 | 6,000 |
売上総利益 | 3,000 | 2,000 |
売上総利益率 | 30.0% | 25.0% |
販売費及び一般管理費 | 2,900 | 1,200 |
営業利益 | 100 | 800 |
営業利益率 | 1.0% | 10.0% |
このように、販売費及び一般管理費が多額になると、売上総利益率(粗利率)は、同業他社と比較して高い値になっているのに、営業利益率になると同業他社よりも低い水準になってしまうことがあるのです。
では、販売費及び一般管理費の中のどこが問題になるのでしょうか。
これは販売費及び一般管理費を各項目ごとに分解して考える必要があります。
これも数値例で自社と同業他社A社と比較してみましょう。
①自社 | ②同業他社A社 | ①/② | ||
広告宣伝費 | 500 | 200 | 2.5 | 倍 |
役員報酬 | 200 | 100 | 2.0 | 倍 |
給与手当 | 900 | 200 | 4.5 | 倍 |
通信費 | 300 | 120 | 2.5 | 倍 |
運賃 | 300 | 120 | 2.5 | 倍 |
減価償却費 | 400 | 200 | 2.0 | 倍 |
旅費交通費 | 100 | 40 | 2.5 | 倍 |
地代家賃 | 100 | 40 | 2.5 | 倍 |
支払手数料 | 100 | 180 | 0.6 | 倍 |
販売費及び一般管理費合計 | 2,900 | 1,200 | 2.4 | 倍 |
このケースでみると、支払手数料は同業他社A社と比較して少ない水準のようですが、
給与手当についてはかなり差が大きいですね。
ですので、この場合では給与手当についてメスを入れることが必要そす。
販売費及び一般管理費の給与手当は売上原価に含まれない経理・総務・人事といった間接部門の人件費が含まれます。
この給与手当が多額になっているということは、間接部門の業務が非効率になっている可能性があります。
間接部門の業務について見直す必要がありそうです。
ケース②:売上総利益率(粗利率)はあまり高くないのに、営業利益率が同業他社よりも高い ⇒ 営業努力や経費削減に積極的
今度は逆のケースを考えてみましょう。先ほどの数値例でいうところの同業他社Aに焦点をあてるイメージです。
同業他社Aの立場で分析してみると、「売上総利益率(粗利率)はあまり高くないのに、営業利益率が同業他社よりも高い」ということになります。
これは、販売費及び一般管理費をうまくコントロールしているということですので、営業努力や経費削減に積極的と評価できます。
あとは、売上総利益率(粗利率)を上昇させるために、
・商品の魅力を高める努力をすること
・値下げ販売をやめる
などの方策をとる必要があるでしょう。
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