この記事では売上債権回転期間を深掘りしていきます。
売上債権回転期間とは?
売上債権回転期間とは、売上債権を回収するのに要する期間を把握するために利用する指標です。
以下の算式で計算します。
売上債権回転期間(月)=売上債権/月次平均売上高
短い方が望ましい指標なのですが、これが長期化することがあります。
例えば、前年は2カ月だったのに、今年は3カ月になっているとか。
このように売上債権回転期間が長期化したときに理由としてどのようなことが考えられるのか、
代表的な理由4つを記載していきます。
長期化した理由①:売上が右肩上がりで伸びているイケイケ状態
売上が右肩上がりで増加していると、それに伴って売上債権は増加しますよね。
売上債権回転期間(月)は、売上債権/月次平均売上高 で計算されます。
分子の売上債権が増加ペースが、分子の月次平均売上高の増加ペースよりも大きくなるので、
売上債権回転期間も長期化するのです。
数値例で確認していきましょう。
前提:売上債権は月末締め2か月後に回収されるものとする。また、貸し倒れは考えない。
【前年】
月 | 売上債権前月残高 | 売上 | 現金回収 | 売上債権当月残高 |
4月 | 0 | 100 | 0 | 100 |
5月 | 100 | 100 | 0 | 200 |
6月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
7月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
8月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
9月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
10月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
11月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
12月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
1月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
2月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
3月 | 200 | 100 | △100 | 200 |
前年3月の売上債権回転期間 = 200 ÷ {(100+100+100+100+100+100+100+100+100+100+100+100)/12} = 2.00ヶ月
【今年】
月 | 売上債権前月残高 | 売上 | 現金回収 | 売上債権当月残高 |
4月 | 200 | 200 | △ 150 | 250 |
5月 | 250 | 250 | △ 160 | 340 |
6月 | 340 | 300 | △ 200 | 440 |
7月 | 440 | 350 | △ 250 | 540 |
8月 | 540 | 400 | △ 300 | 640 |
9月 | 640 | 500 | △ 350 | 790 |
10月 | 790 | 600 | △ 400 | 990 |
11月 | 990 | 700 | △ 500 | 1,190 |
12月 | 1,190 | 800 | △ 600 | 1,390 |
1月 | 1,390 | 1,000 | △ 700 | 1,690 |
2月 | 1,690 | 1,500 | △ 800 | 2,390 |
3月 | 2,390 | 2,000 | △ 1,000 | 3,390 |
今年3月の売上債権回転期間 = 3,390 ÷ {(200+250+300+350+400+500+600+700+800+1,000+1,500+2,000)/12} = 4.73ヶ月
このように、売上が毎月増加している今年のほうが、売上債権回転期間が長くなりましたね。
長期化した理由②:入金サイト(=入金されるまでの期間)が長い取引先への販売が増えた
商取引では、得意先ごとに何か月後に入金されるかの条件を決めています。
例えば、得意先A社は2か月後に入金します、得意先B社は3か月後に入金しますよとか。
なので、入金サイト(=入金されるまでの期間)が長い得意先への売上が増えれば、それだけ売上債権も増えますよね。
先ほどの例の、得意先A社と得意先B社だったら、得意先B社への売上が増えれば売上債権も増えることになります。
長期化した理由③:回収できていない売上債権が増えている
決済条件通りに売上債権が回収できていないと、売上債権回転期間が長期化する要因になります。
決済条件通りに売上債権が回収できていないものについては、その得意先に連絡して、きちんと入金してもらうように依頼しないといけないです。
長期化した理由④:(無いと信じたいが)架空売上を計上している
売上を多く見せようとして、架空売上を計上することによっても売上債権回転期間が長期化します。
なぜならば、その架空売上によって計上された売上債権は、いつまでたっても現金回収されることがないためです。
そのため、長期間売上債権として残ってしまうことになるため、売上債権回転期間が長期化するのです。
ここで、頭の良い不正実行者は、この入金もごまかしてきます。
例えば、
①架空売上の計上
(売上債権) 1,000 / (売上) 1,000
②簿外で借入を行って資金を調達する。
仕訳なし(簿外なので)
③架空売上に関する売上債権の入金消込
(現預金) 1,000 / (売上債権) 1,000
このようなことをされると、売上債権回転期間に異常は出てこなくなるので、別のアプローチが必要になります。
まとめ
以上、売上債権回転期間が長期化したときに考えられる理由を4つ取り上げました。
まとめると、
①売上が右肩上がりで伸びているイケイケ状態
②入金サイト(=入金されるまでの期間)が長い取引先への販売が増えた
③回収できていない売上債権が増えている
④(無いと信じたいが)架空売上を計上している
でした。
売上債権回転期間が長期化した要因を検討する際の参考にしてくださいね。
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